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2023年の仙台七夕まつりで「金賞」を受賞!七夕飾りの作り手「大正園」4代目にインタビューしました。

仙台の夏の3日間を彩る「仙台七夕まつり」。街はカラフルな七夕飾りを見上げる人たちでにぎわいます。

「仙台七夕まつり」を探求すべく、今回は七夕飾りの「作り手」にお話をお聞きしてきました。どんな人たちが作っているの?どんな想いが込められているの?いつだれが設置しているの?そんな舞台裏のストーリーをお届けします。

今回お話をお聞きしたのは、仙台駅西口からすぐのハピナ名掛丁商店街にお店をかまえる「大正園」の4代目 佐藤英久子(えくこ)さん。

創業120年を超える仙台の老舗企業の代表取締役社長であり、毎年商店街ごとに行われている七夕飾りの審査で上位入賞の常連。2023年の仙台七夕まつりでも金賞の飾りを手掛けた方です!「七夕飾りのことなら、夜まで話せますよ」と熱く、やさしく、たくさんのお話をしてくださいました。

お母さまから受け継いだ七夕づくり

現在、お茶と和雑貨の店として縁起物などを中心に販売している老舗の「大正園」が七夕飾りを作りはじめたのは、今から65年程前のこと。

歴史を感じる(昭和)34年と書かれた初代七夕担当の社員さんのデッサン帳。

英久子さんが、お母さまから聞いた昭和の情景。

「母が大正園に嫁いできた昭和30年代は、街全体がお祭りムードに沸いていた時期だったようです。母が先頭を切って七夕飾りの制作をするようになった昭和後半頃には、街のお店の若奥様方が競い合うように七夕飾りを作ったそうです。祭り当日までどんな飾りを出すか秘密で。」

このような七夕飾りの競い合いがあったからこそ、毎年8月6日~8日の3日間で200万人を越える観光客が全国から訪れる、今の「仙台七夕まつり」があるのかもしれません。

アルバムの中の一枚。英久子さんのご両親が8月6日初日の朝に丹精込めて作った七夕飾り。
大正園と七夕の歴史がわかる、過去の七夕飾りが次々と。

そんな昭和時代の「仙台七夕まつり」の功労者であるお母さまから、娘の英久子さんが引き継ぎ、七夕飾りを作って10年以上が経ちました。

そして、2023年の七夕飾りは、英久子さんの息子さんも制作に参加しました。息子さんは、英久子さんが紙を触る音が聞こえてくると、夏がはじまると感じるのだそうです。

こうして、「大正園」の七夕飾りは、祭りの3日間のために本気でがんばる親の姿を間近で感じながら、受け継がれていきました。

毎年作る七夕飾りのアイディアの源とは

仙台七夕飾りは、「短冊」「紙衣」「折鶴」「巾着」「投網」「屑籠」「吹き流し」7つの飾りで作られます。

テーマを決めて、この7つを組みあわせた配色、配置を考えて、立体的な美しさを手作業で作り出す。なんと細かく繊細なのでしょう。

 その制作のアイデアについてお聞きしました。

「母が作っていた時は、 まずは彩りを鮮やかに、それから色の組み合わせも母流にアレンジをしていたところが多かったようです。 それを見ながら育った私は、そこにオリンピックなどの時代背景も飾りに反映しながらアイデアを考えています。」

そのようにアイデアを練り出しながら、パーツ制作を手伝ってくださる人たちにお声がけして、パーツごとに締め切りを決めてお願いするそうです。

そして驚いたのは、集まった7つ飾りを組み合わせて形にするのは、英久子さんがひとりで手掛けているということ!

長さ2メートルの七夕飾りをおひとりで5つ!祭りの3日間、たくさんの人を喜ばせるために毎年繰り返し。

英久子さんは、「お店がここにある限り、作り続ける」と話してくれました。お話をお聞きすればするほど、来年はもっと細かいところまで拝見しようと思うのでした。

新聞紙で作った七夕飾りを制作されたことも。

金賞を受賞した七夕飾りのテーマは「不死鳥」

2022年の暮れのころ、お隣が火事になってしまい、 延焼で「大正園」の倉庫の商品が全く販売できない状態になってしまったそうです。

その時、1番最初に見つけたのが、煤だらけになった折り紙でした。

英久子さんはそんな時でも逆境をアイデアに転換。「それを生かした飾りを作ればいい」と思ったそうです。

その時に生まれたテーマが受賞作品の「不死鳥」です。

暗い色の吹き流しにあえて明るい色をのせ、暗闇の中で燃え盛る炎を表現。変形させた折り鶴を組み合わせて、不死鳥のごとくよみがえらせることをイメージしています。また、コロナ収束が見えてきたので、みんなでもう一度上を向こうという気持ちも添えられています。

この「不死鳥」の重要なパーツ制作を、英久子さんは昨年息子さんに託しました。そして、2023年の「仙台七夕まつり」で堂々の金賞を受賞されています。

不死鳥のパーツ制作の様子。

作り手を支える陰の立役者たち

「お祭り初日、まだ街が動き出す前の8月6日の朝方、男性の方がみんな汗だくで商店街のアーケードを走り回っているんです」と、見えないところで支えてくれる飾り手のこともたくさんの方に伝えたいと話す英久子さん。

アーケードをゆっくり歩きながら一つひとつの七夕飾りを見て、吹き流しをくぐる。そして次の飾りへ。

見る側を満足させる間隔もきちんと加味され、想いのつまった七夕飾りは飾り手によって丁寧に設置されています。私たちがきらびやかな七夕飾りに魅了されるのは、そういった見えないところで尽力されている方たちの技術もあってこそなんですね。

作る・見る。参加型のお祭り構想

仙台の玄関口である仙台駅からすぐの商店街で、長年七夕飾りを作り続けている「大正園」。その店主である英久子さんは「仙台七夕まつり」を今よりもっとたくさんの人に来て見てもらうために、何が必要だと感じているのでしょう。最後にお聞きしました。

「参加型が『仙台七夕まつり』を発展させると考えていて、実はすでに『大正園』の2階で七夕飾りのワークショップを実施しました。難易度レベル1・2・3と分けて、3回参加して一緒に作り上げていくそんなワークショップです。今後は、やり遂げた人に“七夕職人”の称号を渡したりするのもいいですね」と楽しいイベントが誕生していました。

踊るという参加はできないお祭りでも、「仙台七夕まつり」の飾りの中に、自分が参加した作品が飾られるのはとてもうれしいこと。作ることで見る楽しみが倍増するはず。

実際、昨年ワークショップに参加された方たちが祭りの期間中にお店の前に来て、自分が携わった七夕飾りを指さしながら喜んでくれている様子をみて、英久子さんもとてもうれしく感じ、またやりがいにもつながったのだそうです。

仙台七夕飾りを通して多くの人が楽しみながらつながるワークショップは今後も注目ですね!

編集後記 

伊達政宗公の時代に、七夕の行事は存在したといわれる「仙台七夕まつり」。

今に続く豪華絢爛な仙台七夕まつりは、作り手である仙台商人の心意気が脈々と受け継がれています。

今回は、仙台駅西口からすぐのハピナ名掛丁商店街にある店舗「大正園」の七夕職人の歴史の一幕をみせていただき、伝統の守り方のひとつを教えていただきました。

今年の仙台七夕まつりは、受け継がれてきた歴史に想いを馳せながら、ぜひ飾りひとつひとつをじっくり鑑賞してみてはいかがでしょうか。

お茶と和雑貨の店 大正園
宮城県仙台市青葉区中央1丁目8番33号
営業時間:10:30~18:30(定休日:毎週木曜日)
公式サイト:http://www.taisyoen.jp/

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